3.茶目子の一日


music start 茶目子の一日 (上)   平井英子 (日本ビクター 昭和4年4月発売)

music start 茶目子の一日 (下)   平井英子

 童謡唱歌  「茶目子の一日」
        佐々紅華 作詞並作曲
        独唱 平井英子
        詞  高井ルビー
        伴奏 日本ビクター管弦團
   (上)
 夜が明けた 夜が明けた 夜が明けた 夜が明けた
   夜が明けた 夜が明けた
   もう夜が明けた もう夜が明けた 明けた明けたと早起の
 雀はお庭の松の木で
   チュツチュク チュツチュク チュツチュク
   チュツチュク 唱歌のお稽古
 お隣の物干の上から おてんとさまが
   真赤なお顔を一寸出して
   茶目ちゃんお早よう 御機嫌よう 
 向ふの横丁から いつものお婆さんが
   納豆 納豆 納豆  
   納豆 味噌豆 とやって来る

母   「サアサアサア茶目子さん、もう七時ですよ、学校がおくれますよ。」
茶目子「アラ私まだ眠いワ、お母様お早やうございます。」
母   「サア着物を着て仕舞ったら、早くお顔を洗ってゐらっしゃい。」 
茶目子「ハイ。」

 水道の冷たいお水を金盥へ 
   ザブザブザブト汲みこんで
 ライオン歯みがきで歯をみがき
   シャボンのあぶくをタオルへつけて
 ポロリと洗へばお顔はサッパリ
   今度ははっきり眼が覚めた

母   「サア御飯が出来てゐますよ、早くおあがりなさい。」
茶目子「アァ忙しい忙しい、頂きます。」

 お膳の上にはお茶碗とお箸
   赤い箸箱小さなお椀
 お椀の中には私の好きな
   卵のお汁が入ってます
 お汁は御飯にかけたいけれど
   中々熱くて食べられない
     やっぱり別々に食べませう
 お皿にあるのは葡萄豆
   同じ豆でも納豆は
 私にやくさくて食べられない
   豆を食べたらその次は
 澤庵のおこうこ
   お茶漬さらさらおこうこばりばり
 さらさらばりばりもうもう澤山
   お母様御馳走様 おお苦しい

 童謡唱歌  「茶目子の一日」
        佐々紅華 作詞並作曲
        独唱 平井英子
        詞  高井ルビー
        同  二村定一
        伴奏 日本ビクター管弦團
    (下)
母   「マア苦しい程食べなくてもいいぢゃありませんか、サア食休みをしたら
 早く学校へいらっしゃい。」
茶目子「それぢゃお母さま行って参ります。」

 今日は時間が早いから 電車に乗らずに歩きませう 
 廣い通りは賑やかで  いいけどうっかり歩けない
 自動車ブツブツブツおお恐い やっぱり足袋屋の横丁を
 曲って近道行きませう あれあれポチがついて来た 
 此処からお帰んなさい ポチ ポチ ポチ

先生  「エゝ皆さん、これから算術をやります。茶目子さん此の問題を考へて御覧
 なさい。」

 先  生 一本三銭の鉛筆を三本買ったら いくらになりますか
 茶目子 三々が九ですから みんなで九銭になります
 先  生 それはよく出来た 今度は読本をやりませう

先生  「茶目子さん、釜盗人を読んで御覧なさい。」
茶目子「ハイ。」
 此の釜はお前のものに相違はあるまい 早速持って帰れ
茶目子「と申しました。」 
 ゐざりは大層喜んで 其の釜を頭にかぶって両手をついて ゐざりだしました
茶目子「役人は後から声をかけて、」
 こら待てゐざり 釜盗人は其方に極ったぞ
茶目子「と言って、」
 下役共に言い付けて 縛らせました
先生  「あゝ大層よく出来ました、今日はこれで御仕舞にします。」

茶目子「母ア様只今、今日はネ、学校で読本が大層よく出来たって褒められたのよ。」
母  「さう、それはようござんしたネ。」
茶目子「其の御褒美に活動へ連れてって頂戴な。」
母  「マアずるい茶目子さんネ、それぢや晩に行きませうネ。」

 活動写真は面白い いくら見てもまだ見たい

説明者「エゝだまし討ちとは卑怯のしれもの、よらば斬るぞ。腰をひねれば紫電一閃、
 闇にひらめく、剣撃のひゞき。」

 今度の日曜又来やう